腰抜け「TIME」の年男選びーTime magazine’s cowardly cop-out on MOY


毎年この時期になると、TIME誌が年末年始合併号で「Man (Person) of the Year」を選んで表紙にする。今年はニューヨークの夜景をバックに佇むジュリアーニ(前)市長が選ばれた。予想していなかったことではないが、ガッカリさせられた。この表紙が意味するところを、考えれば考えるほど暗澹とした気持ちになる。

この「暗澹」の原因を最初から説明すれば、実はかなり前から私はアンチジュリアーニ派だったこともある。元検察官で正義感が強すぎるのか、市長としての彼はホームレスの人たちを強制的に施設に収容したり、地下鉄の物乞いを逮捕したりと、人権よりも「快適な市民生活」を優先させるところが気にくわなかったのである。挙げ句の果ては一時期、Jウォーク(横断歩道ではないところを渡ること)まで取り締まり、違反者からは罰金を取るとまで言い切った。

道を歩くときは「てやんでえ〜! 田舎モンじゃあるまいし、いちいち横断歩道なんか渡ってたらニューヨーカーの名が捨たらーな」を信条としていた私は、これにかなり腹を立てていた。(「逮捕できるモンなら、してみろい」とJウォークを止めることはなかったし、結局逮捕されることもなかったが)

元々、ニューヨークという街の市長に共和党の人間が選ばれること自体、おかしいと思っていた。ニューヨークは伝統的に民主党が市政を握る街なのである。パタキ知事やら、ブルームバーグ新市長などお呼びじゃない街のハズなのである。

もちろん9月11日以降、彼に対する評価はかなり変わった。混乱の危機にあって、全面的に賛成できかねても、そのビシッとした態度はアッパレものだった。その前からも、前立腺ガンやら、離婚のスッタモンダやら、彼が完全潔癖な人間ではないところが見え始めてはいたが。

というわけで、ジュリアーニの功績が評価されることについて異論はない。

だが、問題はジュリアーニを表紙に選んだタイム誌の及び腰な態度だ。結局は一介の市長でしかないジュリアーニをここまで世界的に有名にしたのは何だったのか、その原因を作ったのは誰なのか。2001年のMan of the Yearは、どう考えたってオサマ・ビンラディンが選ばれてしかるべきであろう。もちろんビンラディンを英雄視するのとは全く別の次元の話だ。TIME誌には、選出基準として「その年に良い意味でも悪い意味でも、世界情勢に最も影響を及ぼした人物」とちゃんと明記されている。

何もヒーローだけが年男になってきたわけではない。過去にはホメイニ(1979年)やスターリン(1942年)だけでなくヒットラー(1938年)までもが表紙になっている。

もちろん、ビンラディンを表紙にしていれば、テロ事件で影響を受けたアメリカ市民から「彼の顔なんて見たくない」「なぜこんな悪いヤツを表紙にするのか」「もうウンザリ」などとという抗議が殺到しただろう。広告スポンサーもいくつか降りるなどと言い出すだろう。残念ながら、アメリカはブッシュみたいなおバカなヤツを大統領にしてしまう国だ。その国民に迎合するとは、なんとも情けない。

だが、そこで敢えて今回の悲劇を直視し、その背景を論じ、確固たる態度でマスコミとしての義務を果たしてもらいたかった。臆したか、TIMEの腰抜けめ。それとも足腰の弱ってきたアメリカのジャーナリズムに良心や義務の遂行を期待する私が浅はかなのか。

言い訳としてこう記されている。

But bin Laden is too small a man to get the credit for all that has happened in America in the autumn of 2001. Imagination makes him larger than he is in order that he fit his crime; yet those who have studied his work do not elevate him to the company of history’s monsters, despite the monstrousness of what he has done. It is easy to turn greivance into violence; that takes no genious, jast a lack of scruple and a loaded gun, The killers he dispatched were braver man than he; he has a lot of money and a lot of hate and when he is gone there will be others to take his place.

「2001年秋にアメリカで起こったことすべてをビンラディンのせいにするに値しない。犯した行為から考えるととてつもない人物に思えるが、歴史上最悪の怪物とは言えない。世界を震撼させるには良心の呵責なしに暴力に訴えればいいだけのことである。彼の手下の方がよっぽど勇気があったと言える。ビンラデインには金と憎しみはありあまるほどあるかもしれないが、彼がいなくなってもまた次の者が現れるだけである。」

しかし、ビンラディンがいなかったらジュリアーニがこんなに注目を集めることはなかった。90年代の好景気の波に乗ってニューヨークの繁栄にあやかったラッキーな1市長として歴史の流れの奥底に埋没されていたに過ぎないだろう。

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ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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