「大阪のオバサン」になりつつある自分にハタと気がついた日ーThe day I realize I’m getting to be an every middle-aged Osaka woman


最近、ハタと気がついて愕然としました。私ってひたすら「大阪のオバサン」になりつつあるんだ?!ってことを。自分にあきれ果てショックだったというよりも「なるほどね〜、血というのは争えないものなんだ」と感慨深かったのですが。

それは今月のロンドン・ブックフェアでのことでした。それまでは挨拶も交わしたことのなかった日本のサブエージェントの人たちを一通り紹介してもらった次の日、同じ会場で同じ人たちに顔を合わせたときに、私はな〜んにも考えずに「クレメンタイン余分にもってきたんすけど、よかったら食べませんか? このクレメンタインって日本の冬ミカンにそっくりなんですよ。時々タネがあるけど」と自分でもクレメンタインの皮をむきつつ、周りの人に薦めまくっていたのでした。で、誰も手をつけないのを見て、あら、せっかく持ってきたのに誰もいらないのかしら、と自らの行為には何の疑いも持たずにその場を後にしたのでした。

で、なぜそれがいかにも「大阪のオバサン」的行為なのか、後日思い知らされることとなったわけです。ニューヨークで観ることのできる日本語放送はフジテレビ系の番組なのですが、その中にタイトルは忘れたけど、視聴者が日頃から不思議に思っている事を投稿して、元気な(キンキン声の)女子アナがさっそく答えを求めて走り回って取材するというコーナー。その日の視聴者ハガキには「なぜ、大阪のオバサンはいつもミカンを持ち歩いていて、知らない人にも配りまくるんですか?」というもの。

さっそく半信半疑の女子アナは大阪に赴き、道頓堀川沿いの道を走ってグリコネオンの前を通り過ぎ(なぜいつもマイクを持って走っているのかが気にかかるがそれはまぁ、置いておくとして)道行くオバチャンを捕まえては「すみませ〜ん、今ミカン持ってますか?」と聞きまくるわけだ。そうすると、買い物袋を下げたナニワなオバチャンは皆(もちろん持ってなかった人のところはカットしてあるんだろうが)口を揃えて、持ってるでー、あたりまえやん、もちろんやないの、変なこと聞く子ォやね、なぁに、自分もミカン欲しいん? ってな調子で、バッグからさっとミカンを出してくるのだ。それも1個だけじゃなくて常に複数。その度に女子アナが驚きまくってみせる。「わ〜、持ってましたぁ。え〜?どうしてぇ?」

なぜ外出するときにミカンを持ち歩くのか、と聞かれたオバサンたち。これまたトーゼンという顔で「外で喉乾いたときにちょうどええし、余分にもっとったら、みんなにもあげられるやん」と答える。

そして次は女子アナ、寄席かなんかのイベント会場に隠しカメラを設置、早めに会場に集まってきた大阪のオバチャンを観察するわけだ。自分の席に座った途端、上方のオバサン軍団はあちらこちらで袋からミカンをとりだす。そしてここからはおそらく東京では絶対に見られない光景だな、と私も察したのだが、大阪のオバチャンは、前の列の席に座っている人の肩をちょんちょんと叩いて、ミカンを薦めるのだ。そして薦められた方も驚く気配は全く見せずに、トーゼンという感じで「ほな、おおきに」とミカンを受けとって食べている。この映像にまたしても、めいっぱい天然入りの女子アナが声を張り上げて中継する。「あ〜っ!今ミカンを出しました、出しました。あ、前に座っている人にもミカンをあげています。知っている人なんでしょうか? みんなでミカンを食べています!」

で、直撃インタビュー。「今、ミカンを配ってましたよねぇ? こちら、お友達なんですか?」突然マイクを向けられたコテコテのナニワおばさんたちは、別に知り合いじゃないわよ、変なこと聞くのねぇ、って感じで、はにかみながらもカメラ目線。そこで男性アナウンサーがテキトーに気の利いたような、利いてないようなコメントをして、このコーナーは終わる。

「知らない人にでも(親切に)声をかける」— 東京じゃ滅多にないことなんだ、と改めて思い知らされた瞬間だった。そうだよねぇ、東京で知らない人が声をかけてくるっていえば、いきなり「あなたの幸せのために祈らせて下さい」っちゅう新興宗教の新米信者とか、「アンケートにご協力くださーい」から始まる悪質なキャッチセールとか、「カワイイ娘いるよ。 5000円ポッキリ」ちゅうようなポン引きの兄ちゃんしか思いつかないもの。

そういう点じゃ、ニューヨークの方がまだ都会が砂漠化してないんじゃないの?という気がする。さすがにミカンは薦められないけど、地下鉄に乗っていたら、いきなり身につけているアクセサリーを誉められて「それ、どこで買ったの?」と本当に欲しそうな顔して聞いてくるおねーちゃんとか、暗い顔して歩いてたら「大丈夫? 何があったのか知らないけど、人生スマイル、スマイル」と元気づけてくれるおじーさんとか、レジに並んでたらクルリと後ろを振り向いて「私、ディスカウントクーポン、1枚余分に持ってるんだけど、使いなさいよ」って言ってくれるオバサンとか。東京でこれをやったら、思いっきり引かれるだろうなぁ、ってことばっかり。

実は私もエレベーターに乗ると、よくやってしまう。あの狭い空間で、見知らぬ他人と、ずーっと同じ方向を向いたまま押し黙っている、という状況がなんだか居心地悪くて苦手なのだ。ま、これは昔からのクセで、日本に帰ったときはデパートだろうが雑居ビルだろうが、エレベーターに乗ったときはグッと我慢して無言のままだが。しかし、最近はそれだけではない。日本にいると、電車の中で騒ぐガキがいると小言の一つも言いたくなるし、本を読んでいる人がいると、「ねぇねぇ、その本、面白い? どうして買う気になったの?」と聞いてみたくて仕方がない。

オバサンなのね、私。しかも、大阪のおばさん。

written by

ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
Related Posts
© Copyright - Books and the City - All rights reserved.