ニューヨークで支持率が急浮上しているゴムぞうり問題ーI’m hoping this “flip-flop” craze will be a flop


流行にはトンと疎い私だが、最近気づいたことがある。気づいただけでなく、ゲンナリもしている。この夏、ニューヨーカーの間で、それもお洒落には比較的敏感そうな女の子たちがナゼかこぞって「ゴムゾウリ」をはいているのである。

流れとしてはこういうことだろうと思われる。

去年、おととし辺りから「ペザント・ルック」と言われる「民俗調」の服が流行っていた。トップは襟周りや袖口にギャザーのよったヒラヒラしたコットンやリネンのシャツで、パンツにも昔懐かしいチロルテープ入りのなどがたくさん出回っていたのだが、やせこけたモデル体型のおねーさんならともかく、「あんなもん、私が着たらホンマモンのペザント(平たく言えば農民のオバサン!)に見えるだけだ」と自覚していたので、この流行には一切背を向けてきた。

で、そのペザント・ルックの足元に皆よく合わせていたのが、ビーズだのなんだのをつけた民俗調のサンダルだった。親指だけ別の輪っかに入れたり、昔のローマ風というのでしょうか、かかとで何重にも巻く長い革ひもがついていたりするヒールのないサンダルがあっちでもこっちでも見られた。

それが今年は何が旬かというと…。ゴムぞうりなんですね、コレが。中にはいかにも有名デザイナーのブランドものよ!ってな凝ったスタイルもある。例えば、バーバリーのチェックがちょこっと入ってたりとか(男物で一足40ドルなり)、塙(やっぱりゴム草履でも「はなわ」って言うんだろうか?)のところにいろいろと飾りが付いていたりとか。しかし! その一方で、下手すると「どこの海の家からかっぱらってきたの、それ?」ってな、モロ、ゴムぞうりで、ばっちり服もメイクもキメたおねーさんたちが、ペッタンペッタンとマンハッタンを闊歩しているのである。

そりゃね、アメリカ風に「flip-flop」と呼べばそれなりに流行アイテムの仲間入り!ってことになるんだろうが(ちなみに、この「フリップフロップ」というのは草履を履いて歩くときの「ペッコンパッコン」の英語バージョンだす)、スニーカーだの革靴だの「靴」しか履いてこなかった西洋人に「草履」を履かせると、耳障りなほど歩く音が人一倍大きい、と思うのは私だけだろうか? おまけにバッチリきめたおねーさまでも、フリップフロップを履いた足の裏が黒くなるほどババっちく汚れている人も珍しくないし。

やっぱりどうしても「ゴムぞうり」っていうと、日本じゃ戦後に廃棄タイヤでリサイクルして作っていたようなビンボー臭いイメージがあるのだよね。いくらシャネルのゾーリだ、グッチのゾーリだ、って言われてもさー。おまけに左の写真のように「ぞうり模様」のズボンのおねーさんまでいるし。

で、ゾーリの話をただの流行ネタで終わらせるような私ではない。「アメリカ人がゴムぞうりを履くと足音がウルサイ」という私の説を裏付けてくれるような本があったのだ。それは「Why Things Bite Back」と最新作「Our Own Devices」で、著者のエドワード・テナー教授は「人間がいかに自分たちが発明してテクノロジーによって苦難を受けているか」を教えてくれる。先日、たまたま覗いた朗読会で「目からウロコ」ってな話を聞いちゃいましたよ。

例えば、ニューヨークの地下鉄の車内に冷房をつけたことで、プラットホームの気温が華氏で10度も上がったとか、堤防やらダムやら洪水対策の建造物を作ったせいで、元々洪水被害に遭いやすいところにまで住宅が建ち並ぶようになったとか、病気やケガを治すために病院に行った人の6%が院内感染するとか、そんなことに加えて、それぞれの文明が作った「靴」によって、人間の足にどの様な変化が起こり、どのようなケガや病気につながっているか、という章がある。

これによると、昔から下駄や草履を履いていた日本人の歩行の仕方は、靴を履いていた西洋人のそれとかなり違っているという。つまり、ずっと下駄や草履で歩いていると、それがすっぽ抜けないように自然とつま先の方から足を上げ下げするようになるというのだ。(ガニ股になる、とも解釈できるが。)

ということは、だ。靴に慣れた西洋人だと、草履を履いたときでも同じように、かかとから上げ下げするので、その際に草履と足の裏が大きく離れ、パッコンパッコンという音が大きくなると説明できるではないか。

そうよねー。アメリカ人たら、背格好もデカイし、声もデカイし、態度もデカイし、おまけにゴムぞうり履いたときの音もデカイと思ったのは、単なる私の妄想じゃなかったんだー。テナー先生、いいこと教えてくれてアリガトー。

というわけで、暑苦しい天気が続くニューヨークで、お洒落にキメたおねーさまがたの横で「ウルセーな、暑苦しいゾ、その音。もっと静かに歩け!」と密かに毒づいている私です。

written by

ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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