シャトル事故でアメリカ全土が悲しみに打ちひしがれているなんてウソーNot the entire nation mourns the loss of Columbia shuttle crew


NASAシャトル、コロンビア号の事故から1週間が経った。そろそろ言わせてもらってもいいだろう。事故直後からいかにもアメリカ全土が、国民の1人1人が、悲しみのどん底に突き落とされているかのような報道に辟易している人間がここにいる。

自他共に認める「ニュース・ジャンキー」の私だが、今回の事故に限っては一切自分からテレビをつけることもなければ、新聞記事を読むこともしなかった。だから、事故のディテールについてはほとんど何も知らない。自分がここまで「あまのじゃく」だとは…知っていた。

もちろん、7人の宇宙飛行士が命を落としたことは痛ましい。だけど、一般人には分かりにくいことだが、元々、宇宙飛行がどんなに危険度が高いものかは、飛行士は皆、重々承知の上なのだ。シャトルは旅客機じゃないんだから、安全第一なんてことははなから言ってないわけで。それでも危険を冒してまでシャトルを飛ばすには、それなりの理由があってのことだし、乗り込む方も「死ぬかも知れないから」といって後込みするようなことはありえない。

世界各国が高いお金を払って、自国の宇宙飛行士をシャトルに送り込んでいることからもわかるように、宇宙で様々な実験をすることによって、色々なことが解明され、将来、我々人類の生活を便利にするかも知れないテクノロジーが生まれていく。そのことのプラスを考えれば、たまに宇宙飛行士が死ぬことぐらい、酷な言い方かも知れないが、小さな代償だ。

アメリカ人が皆、宇宙飛行士たちの死を嘆き悲しみ、心を痛めているというのもウソだ。インターネットのオークションサイトでは、事故当日から「コロンビアの破片」が売りに出されていたのだから。盗まれることを懸念した政府が、おおげさに「シャトルの残骸には有毒な物質が含まれている」と警告していたのも、ま、あながち真っ赤なウソではないが、そうでも言わないと盗まれることを知っていたからだ。

それよりも私が懸念したのは、バカ息子ブッシュがこの事故を「国民が団結して、アメリカの発展のために、イラクを攻撃する」ための材料に使うことと、宇宙開発費が減らされて、軍事費に回されることだった。ただでさえ、オンボロになって空中分解するまで修復を重ねて使わなければならないシャトルなのに、これ以上予算を減らされては安全もへったくれもないだろう。

「チャレンジャー号」の事故は84年か86年頃だったろうか。あの時も機体が爆発する映像を何度も何度もテレビで観せられた記憶がある。私も若かったんだろう、何だかひたすら悲しかった。チャレンジャー号のメンバーには、一般市民の小学校教師から、黒人のオジサンから、日系人のオジサンから、女性飛行士から、いかにも「地球人の代表でーす」という顔ぶれだったからかもしれない。仲良さそうに笑顔で写っていたクルーの写真を何度も見たからかもしれない。

今回、テキサス上空で粉々になっていくコロンビア号の映像を見ながら、他にも何かが壊れてしまっているのだ、と思った。それは、大国アメリカの宇宙開発技術を他の国も利用して、チームとして協力しながら敢えて危険を冒して人類全体のために実験を繰り返す「世界平和」のあり方…だったのかも知れない。

written by

ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
Related Posts
© Copyright - Books and the City - All rights reserved.