コッポラ監督の文芸誌Zoetropeのやたらに気前のいい朗読会ーSponsor-rich Zoetrope’s generous reading of Dave Eggers novella


>「ゾーエトロープ」という季刊誌がある。新雑誌の創刊が非常に難しい米雑誌界にあって、こんなお堅い文芸誌が存続していること自体がオドロキ!に近いものがある気がするが、ゾーエトロープのバックについてるのは、かのフランシス・フォード・コッポラ監督で、あわよくばこの雑誌から映画の脚本が生まれればいいな、という魂胆で作られた文芸誌なのだ。聞き慣れないゾーエトロープというこの単語は「回転のぞき絵」のこと。見たことないかなぁ。筒の中にアニメのセル画のように一連の続き絵が描いてあって、これを回しながら筒の反対側ののぞき穴から見ると絵が動いているように見えるヤツ。紙媒体から動画へ。正にピッタリのネーミングなわけ。

その下心ミエミエのところが気になって、つい、イジワルな先入観が邪魔してしまうのか、書店で手にとってもあまり買ったことはなかったが、いつ立ち読みしても気になるライターが見つかる雑誌なのである。そのゾーエトロープが定期的に朗読会をやっていると聞いて、重い腰を上げて覗いてみた。

会場はBubby’sというレストラン。超オッサレーなトライベッカの一等地にあるというのに、全然シャレてない、カフェなんだかダイナーなんだか、よくわからない店なのだ。ここの部屋を借り切って、しかも入場料タダ、おまけにジンのミニボトルまでお土産にもらえる、というリッチな朗読会。今回はA Heartbreaking Work of Staggering Geniousのデイブ・エガースの小説を丸々「演じて」しまうという。太っ腹だねぇ。とはいえ、エガース本人はサンフランシスコに住んでいるらしいから、会場にはいなかったけど。

今回、朗読されたThe Only Meaning of the Oil-Wet Waterは、ゾーエトロープ最新号に抜粋が載っている男女の物語。お互い、人生ってこんなもんかしら、この辺でそろそろ手を打とうかなっていう、ラブストーリー未満、夫婦以下の男女の胸の内。コスタリカを舞台にサーフィンだの馬だの、今ひとつドラマに欠けるエピソードが綴られる。しかしなぁ。途中で退屈してくる。

エガースなら、どんなに短くても抱腹絶倒ものも書けるだろうし、短編を初めからお終いまで読むよりも、ゾーエトロープの他の作品もやって欲しかった。しかし、あまり文句も言えまい。こっちはお金を払っているわけじゃなし、バーではスポンサーがタダ酒を振る舞うという気前の良さ。

聞けば、こんな朗読会をこれからは毎月最終月曜日の夜に催すのだという。来月は私のお気に入りのA・M・ホームズ。前回、ビレッジのサイン会では、アルツハイマー病のリサーチをしている時に、レーガン元大統領夫妻のことが気になりだして、いろいろ調べているんだと言っていたけれど、ようやくそれをまとめたらしい。個人的にはこっちの方が気になる。まぁ、機会があったら除いてみて下され。会場のバビーズもナニやら凝ったウェブサイトを持っていて、世の中、お金があるところはあるんだなぁ、となんだか不思議な気持ちで家路についたのだった。

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ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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