ほとぼりが冷めたかのようなNYタイムズの記事捏造事件のその後ーThe aftermath of Jason Blair brouhaha at New York Times

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ほとぼりが冷めたかのようなNYタイムズの記事捏造事件のその後ーThe aftermath of Jason Blair brouhaha at New York TimesBooks and the City

1週間ばかり日本に帰っていたのだが、毎朝読む新聞がNYタイムズから朝日新聞にシフトしてしまうのはけっこう辛い。おまけにその間に若手記者による大規模な記事ねつ造が発覚したという大きなニュースがあった。他の地方紙からそのまま写し取ってきたり、行ってもいない取材に出かけた振りをして記事をでっちあげていたらしい。そしてその対応として、NYタイムズ自らジェイソン・ブレア記者の記事を徹底的に洗い直して、「タイムズ社始まって以来の一大汚点」と称したらしい。

一読者としての感想は「んで、この後、上層部はどう責任とるんでしょーね?」という冷ややかなもの。元からこっちは何も毎朝NYタイムズを神聖視して読んでいるわけではないし、今回の事件のせいで「んじゃ、購読するの辞めようか」という気にはならない。ただ、その特殊な企業文化、なんとかならないのかね? 

NYタイムズというカイシャは、「カルト」のようなところがある。このカルトのメンバーには自分たちが全米一、あるいは世界一の新聞で働いているというエリート意識があって(いわゆる選民思想ね)、またそれをもてはやす(タイムズと聞けばヘーコラするような取材対象)人が大勢いるから、ますますつけあがる。大学の時なんか「NYタイムズの記者になるのがとにかくジャーナリズム学科の学生の最高峰」と信じて疑わない教授がいた。(本人は特にタイムズの人間ではない。)

別にそのエリート意識がちゃんと自律とか、社員のパフォーマンス管理につながっていれば、今回のような事件も起こらなかっただろうに、と思われる。

まぁ、日本のマスコミでは既に風化の始まった古いニュースかもしれないので、あまり日本で報道されていなかったその後のNYタイムズの対応でも書いておこう。

今その行動が注目されているのがハウエル・レインズだ。たたき上げの記者ではなく、経営管理者としてexecutive editor、つまり編集主幹になった男で、モットーとしては「深く調査を掘り下げた記事よりも、娯楽性の高い、早い情報」を謳っている。そして社内では、彼の「派閥」が幅を利かせ、レインズに気に入られるかどうかで昇進が決まる、まさに教祖様をとりまくカルトだ。もし、今後、さらに他の記者によるねつ造が発覚すれば、レインズは更迭を免れないだろう。

なんて書いた途端、今度はピューリッツァー賞を受賞したこともあるベテランコラムニスト、リック・ブラッグが、インターンが現地で取ってきたインタビューをそのまま自分のコラムに使っていたことがバレて、停職処分になった。ブラッグは「そんなことは、誰もがやっている」と息巻いてそのままタイムズを辞職したところだ。今、タイムズでは読者に向けて、他にも怪しいと思われる記事を見つけた場合に通報できるアドレスまで公開している。

ニューヨークの他のマスコミ(タブロイド紙や週刊誌)の反応も冷ややかで、NYデイリー・ニュースは「次は誰がタイムズを追い出されるか?」と幹部やコラムニストに退職オッズをつけて遊んでいるし、NYポスト紙には「ジェイソン・ブレアの足取りをたどるツアー」なるものが紹介されていた。タイムズスクエアにあるNYタイムズ本社の周りの酒場で、ブレア記者がよく顔を出していたバーを転々とハシゴするお遊びだが、彼がよくスコッチ・ウィスキーをオーダーしていた「ロバート・エメッツ」(西44丁目と8番街の角)に始まって、彼がケータイとノートブックパソコンを使ってウェストバージニア発を装ったジェシカ・リンチ兵士釈放に関する記事を書いたとされるバー「シベリア」(西40丁目と9番街)、そして外で一服煙草を吸ってから(最近、また法律が厳しくなって、NYのバーではタバコが吸えなくなった)、本社からほんの目と鼻の先の「プレイライツ・タバーン」(西44丁目と8番街)に戻ってくる、というコースになっている。

written by Lingual

ニューヨークと東京を往復する文芸エージェント。 日本の著作品を欧米マーケットに売り込むべく孤軍奮闘中。
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